ジンが新機軸となるチタン製ダイバーズウォッチ、Tシリーズを発表し、

新しいウィークエンドコラムへようこそ。このコラムは、1週間日々の暮らしに忙殺され、時計に関する細かな情報のすべてを追いかけることができなかった人たちのためのキャッチアップセッションであり、まだまだ満足していない熱心な友人たちにおかわりを提供するためのものでもあると思って欲しい。また、“ニューウォッチ・アラート(New Watch Alert)”では過去1週間に発売された新作時計を、“見逃した方のために(In Case You Missed It)”ではもう一度見るべきお気に入りの時計を、“カルチャー・オブ・タイム(Culture of Time)”ではHODINKEEコミュニティ外からの興味深い記事を、そして“ザ・カンバセーション(The Conversation)”では皆様からのコメントへの返答をお届けする。土曜日の朝、コーヒーを片手に、ぜひご覧いただきたい。

ジンが新機軸となるチタン製ダイバーズウォッチ、Tシリーズを発表し、ダニーがロンジンの新しいパイロットウォッチを紹介、ベンはそれぞれのホイヤー カレラの壮大なリファレンスポイントの詳細な情報をお届けし、さらにマライカが新しいカルティエ 「タンク フランセーズ」を知っているつもりの人たちのために、コアとなる情報を提供するなど、今週は時計業界からエキサイティングなニュースが目白押しだった。さらに、カルト的人気を誇るブランド、ダニエル・ロートが2023年に再始動した件、チューダー独自のすばらしいサイクリングプログラムの紹介、そして、なぜGMT機能付きのダイバーズウォッチが欲しいのかという一意見まで掲載したため、以下をご覧いただきたい。
ニューウォッチ・アラート(New Watch Alert)
ジンの新型チタンダイバー「T50」、強烈なパンチのある1本

ストイックなドイツブランドは、2020年春に発売した小振りなスティール製ダイバー“U50”の成功を受けて、より軽量で魅力を増したチタン製の新シリーズをラインナップに加えた。

ロンジン パイロット マジェテックは、伝統的なオマージュである

ロンジンほど需要のある過去の傑作を持つブランドはないが、ヴィンテージ風の最新パイロットウォッチ、“パイロット マジェテック”は、そこからインスピレーションを得ている。この時計はオリジナルサイズよりひと回り大きくなっても、その魅力は損なわれていない。そんなミリタリーデザインに回帰した、この予想もできないようなモデルを、ダニーが詳しく深堀りしている。

※ Japanチームによるハンズオン記事は「ロンジン パイロット マジェテックを実機レビュー」をご覧ください。

見逃した方のために(In Case You Missed It)
ホイヤー ヴィンテージカレラ 歴代モデルを徹底解説

覚悟して見てほしいが、ベン・クライマーが金曜日のスケジュールに空きを見つけ、ユーザーがとても感心してしまうようなヴィンテージクロノグラフのReference Pointsを紹介してくれた。ホイヤー カレラのすばらしさと変遷について、9500ワード以上の文章と45分ものすばらしい映像で紹介している。

入っていた予定をキャンセルして、そして友人を差し置いて、自分へのご褒美として史上最高のクロノグラフの系譜に触れてみてはいかがだろう。

カルティエの新作「タンク フランセーズ」は、もはやレディスウォッチではない

カルティエ 「タンク フランセーズ」のリニューアルを受けて、我らがスタイルエディターのマライカ・クロフォードは、このクラシックなデザインにクローズアップし、個人的な視点で紹介している。そして、ガイ・リッチー、ケイト・モス、さらにはスパイス・ガールズまで取り上げ、マライカは「フランセーズ」が単なる“大人のレディスウォッチ”ではないことを、現代的な背景を踏まえて語っている。

「フランセーズ」が女性的であり続けているにもかかわらず(さらにプリンセス ディ効果をいくら強調していても)、クロフォードは新しい「フランセーズ」は別物であると強く主張している。さらにモダンで、マットで、ユニセックスなものであると。

この時計のハンズオンのインプレッション、美しい写真、さまざまな背景・情報については、上のリンクをクリックして、確認してみて欲しい。

ダニエル・ロート ラ・ファブリック・デュ・タンの協力のもと、2023年に再始動

ダニエル・ロートファン歓喜のビッグニュースが飛び込んできた。ルイ・ヴィトンとラ・ファブリック・ドゥ・タンの協力のもと、2023年にダニエル・ロートが独立ブランドとして再始動するというのだ。ダニエル・ロートは2000年からブルガリの傘下(その後、ブルガリはLVMHに売却されることになる)に入っていたが、このブランドの新たな独立は、今年後半に集大成として発表される限定モデルによって最高潮を迎えるだろう。

クロノグラフ リファレンス C147。Image: Courtesy of Sean Song

ダニエル・ロートというブランドは、数世代以上の歴史を持っている。現代の体制でも、非常に高品質で希少なインディペンデントウォッチを製造するマニュファクチュールとして設立された当時と、同様の気持ち・理念で運営していることがわかる。

歴史がありカルト的人気を集めるブランドの次の行動に備えて準備運動をしたいのなら、ぜひトニー・トライナによる全文をご覧いただき、ダニエル・ロートに関するニュースを楽しんでもらえればと思う。

Dispatch: チューダーはサイクリング業界で最も果敢なチームをつくったのか?

熱心なサイクリストであり、また優れた写真家であり、そして時計愛好家でもあるザッカリー・ピーニャ氏ほど、チューダー プロサイクリングチームの取材に適した人物はいないだろう。最新のDispatchでは、スペインの地中海沿岸120kmを走破するピーニャ氏と、彼と馬が合ったチューダーチームを追跡した。

ピーニャ氏はこのサイクリングで、時計ブランドが資金を提供して設立したプロサイクリングチームの個性や計画、そして原動力について掘り下げながら、走行中にすばらしい写真の数々を撮影した。このチームはポテンシャルを秘めた若いメンバーで構成されており、また各メンバーはスペシャルな(そして一般人には買えない)時計を身に着けていた。

さあ、ペダルを踏み込んでクライムを楽しんでみよう。これはとびきりいいストーリーだから。

ザ・カンバセーション(The Conversation)
The Story: セイコー プロスペックスの新機軸、ソーラー フライヤー型GMTダイバーズ(SFK001、SBPK001)が登場

コメント: ダイバーズGMTの時計は本当に苦手だ。なにか機能がごちゃついているような気がするからだ。ほとんどのダイバーズウォッチが水に濡れることがないことはわかっているとはいえ、なぜダイバーは世界各地の時刻も知る必要があるのだろうか? 減圧の心配やサメに食われる心配をしたほうがいいのでは? – ColinGermany

レスポンス: 興味深いクエスチョンだが、ダイバーGMTがサメに関するあらゆるシナリオの可能性について応えることはできない。ただ言えるのは、ダイバーズベゼルとGMT機能の組み合わせは、水中でも陸でも非常に便利な時計だということだ。

ダイバーズウォッチに重点を置いたこのセットアップにおいては、両者の長所を生かすことができる。タフで信頼性があり、さらに便利な機能を備えた時計(潜るときもそれ以外のときにも。それがダイバーズウォッチの魅力である)でありながら、第2時間帯を簡単に管理できる機能を備えているからだ。

確かに、ほとんどの人はダイビングするからといってダイバーズウォッチを使わないと思うが、なかにはダイビングに使う人もいるし、ダイビングをする場合は旅行で移動しなければならないこともよくある。このセイコーのようなダイブGMTがあれば、旅行用にもう1本時計をもっていく心配(および、それに伴う別のリスクもだ)はないだろう。ダイビング中の時間、ピザを待つタイミングの時間、飛行機の待ち時間、自宅や次の目的地での時刻を確認するときも、ひとつの時計で対応できるのだ。

GMTウォッチの基本的な仕様は24時間ベゼルを備えたものだが、ダイバーズウォッチでダイビングをする人の数と、24時間ベゼルの本来の機能(UTCを基準としたほかのタイムゾーンのオフセットを取得するため)を知っている、使っている人の数はほぼ同じだと、僕は考えている。

GMT、ダイブGMTなど、どのようなレイアウトであってもその利点は同じかつ、主に主観的なものであり、それぞれのニーズと結びついていることだろう。ダイブGMTの使い勝手は、旅行やダイビング(そして、ダイブコンピュータの代わりとしても時計を使用できる)をする人にとって非常に魅力的なものだ。そして単に、スポーツウォッチとして純粋な便利さが好きなのだ…ときたまサメも。

ゼニス、「クロノマスター リバイバル 次元大介エディション」に新情報追加~

名作アニメ『ルパン三世』の次元大介が愛用した伝説のウォッチに敬意を表する限定モデル第4弾。

ゼニスは約50年の時を経て実現した「クロノマスター A384 “ルパン三世”」を発売しました。人気アニメシリーズ『ルパン三世』に登場するルパンの相棒、次元大介の時計から着想を得たこのタイムピースは高い人気を誇り、ゼニスはこれまでに3つの限定モデルを製作しています。そして今回、ゼニスは第4弾となる「クロノマスター リバイバル 次元大介エディション」を発表します。最新作は『ルパン三世』に登場した時計をより忠実に再現し、マイクロブラスト仕上げを施したマットブラックのチタンケースを採用しています。

1969年、ゼニスは画期的なキャリバー エル・プリメロと、これを搭載した初のウォッチA384を発表しました。そのわずか2年後の1971年に、人気漫画『ルパン三世』を原作とするTVアニメの第1シリーズが放送を開始。日本で一世を風靡し、その人気は国外へも広まります。個性豊かな登場人物のひとりが、スタイリッシュな射撃の名手でルパンの相棒の次元大介です。

©モンキー・パンチ/TMS・NTV

次元はアニメの中で、2度にわたりゼニスの時計を着用している姿で描かれました。その時計は明らかにA384をモデルとしていますが、アニメーターによる創作であり、実際には存在しないものでした。興味深いことに、初回はブラックの文字盤、2度目はシルバーの文字盤で登場しています。

©モンキー・パンチ/TMS・NTV

それから数十年の時を経て、ゼニスはこのフィクションを現実のものにし、次元の時計にオマージュを捧げる3つの限定モデルを発売しました。
2019年にリリースした第1弾は50本限定のスチールモデルで、ブラック文字盤に金箔のアクセントを施しています。さらに、アニメでの描写に忠実に、アワーマーカーをより小さくし、ゼニスのロゴにさりげなくアレンジを加えたユニークピースを、フィリップスのオークションに出品しました。
2020年に登場した第2弾は200本限定のスチール製クロノグラフで、ホワイトの背景にブラックカウンターを配した「パンダ」文字盤を採用しました。
そして、2021年に発表した250本限定の第3弾では、ブラックモデルとシルバーモデルを大胆に組み合わせたアシンメトリーデザインの文字盤を誕生させました。

新作「クロノマスター リバイバル 次元大介エディション」では、このトリビュートがさらに進化します。37mmのケースは、マイクロブラスト仕上げを施したマットブラックチタンを採用。軽量かつ優れた耐久性を備えるチタンに均一なマット仕上げを施し、ダークグレーのニュアンスを引き出しています。

ベージュカラーの文字盤はブラックのクロノグラフカウンターとタキメータースケールによるコントラストが際立ち、ベージュのスーパールミノバ®を塗布した針とアプライドマーカーがヴィンテージの温かみある趣を添えています。

内部には、1969年の伝説的ムーブメントの系譜に連なるキャリバー エル・プリメロ 400を搭載。ゼニスが一貫して自社で開発・製造を行うこのムーブメントは、5Hz(毎時36,000振動)の振動数で動作し、50時間のパワーリザーブを実現します。300個以上もの部品から作られる緻密な構造と美しい仕上げを堪能できるサファイアガラスの裏蓋には、ひと目でそれと分かる次元大介のシルエットが刻印されています。

「クロノマスター リバイバル 次元大介エディション」は、著名なゲイフレアー社が1969年にゼニスのためにデザインしたアイコニックなラダーブレスレットを備えています。A384、A385、A386など最初期のエル・プリメロモデルの一部に採用されたラダーブレスレットは、中央のリンクが交互に中抜きされ、軽量性と快適性を備えることでその名を知られています。今作ではラダーブレスレットがマット仕上げのチタンを用いてよみがえり、伝統と現代の人間工学の融合を体現します。

【仕様】
クロノマスター リバイバル 次元大介エディション
リファレンス:97.L384.400/04.M384
税込価格:1,430,000円
[特長]:自動巻エル・プリメロ クロノグラフ。ベージュカラー文字盤、ブラックカウンター。4時半位置に日付表示。200本限定モデル。

ムーブメント:エル・プリメロ 400
・振動数:毎時36,000振動(5Hz)
・パワーリザーブ:50時間
・機能:時・分表示、スモールセコンド、クロノグラフ、4時半位置に日付表示
・仕上げ:サファイアガラスの裏蓋に次元大介のシルエットを刻印
・素材:マイクロブラスト仕上げチタン
ケース:37mm
・防水機能:5気圧
文字盤:ベージュ文字盤、ブラックのクロノグラフカウンター
・アワーマーカー:ルテニウムプレート加工、スーパールミノバ®SLNを塗布
・針:ルテニウムプレート加工、スーパールミノバ®SLNを塗布
ブレスレット&バックル:マイクロブラスト仕上げチタン製ラダーブレスレット
・フォールディングバックル付き

【お問い合わせ】
ゼニス ブティック銀座
TEL.03-3575-5861

ミニサイズの新鮮なカルティエ3選。

セレブリティからInstagramの有名人、時計愛好家、そしてニューヨークのダウンタウンに住む“クールキッズ”など、ありとあらゆる場所にあふれており、そのトリクルダウン効果を簡単に見抜くことができる。昨晩も、ロンドンにあるごく普通のレストランチェーン店で、イエローゴールドの小さなセイコーを身につけている給仕係を見かけた。ティニー タイニー ウォッチ(Dimpieceの創設者、ブリン・ウォルナー氏による造語で、小さくて可愛らしい時計という意味)は、どこにでもあるのだ。

小振り時計の復活は、ファッション業界におけるジェンダーラベルの見直しから生まれたものであるため、少なくともそれと関連している。最大手の老舗ブランドが、男女共同参画のランウェイショーのアイデアを取り入れることにしただけではなく、今やグッチのように強力なブランドが両方の性に向けた商品をデザインし、ターゲットにしている。

男性はスカートにクロップドTシャツ、ブラウス、そして“女性らしい”ジュエリーを身につけるなど、性の垣根を超えたフルイドファッションを、キッド・カディ(Kid Cudi)とハリー・スタイルズ(Harry Styles)がリードしている。一部の人にとっては、これは大変革のように思えるかもしれないが、正直に言おう。ジェンダーニュートラルの思想はすでに普通のこととして称賛されている。なぜならハイファッションの世界では本気で誰も気にしていない、というのが真の変化の兆しである。

時計の製造という、本来は氷河のようにゆっくりとしたペースに回帰すると、ジェンダーのレッテルを取り払うという考え方のほうが主流になりつつあるのだ。私は男性が小振りな時計を身につけることを特に革命的だとは思っていないが、これは自分が何をすべきか、何をしてはいけないかなど多くのルールがある業界のなかで、新鮮な息吹を感じさせてくれるとは思う。

カルティエは、スモールウォッチのトレンドの先頭を走っている。ティニー タイニー ウォッチクラブの結成メンバーであるタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, the Creator)がこの数年のあいだ、ブランドに多大なストリートクレド(ストリートカルチャーのトレンドに敏感な都会の若者から信頼を受けること)を与えたことは間違いない。とはいえ、ジェンダーバイナリー(男性か女性かの二択のみで性別を分類する見解)について広く議論されるようになるずっと前から、カルティエはジェンダーニュートラルな時計をつくり続けてきたことを否定する人はいないだろう。

私が完全な反対主義者であるという余談になるが、もしあなたがXがクールだといったら、私はすぐにYのほうがクールだというだろう。人気が出ているのを見ると、本気で身体的な不快感を覚えるほど苦しくなるのだ。そのためこの瞬間だけは、小さな時計はただ小さな時計に過ぎないということにしておこう。駆け引きはもういい! これからの数分間は、このミニサイズのカルティエの時計が、本当に純粋な喜びに“火をつけて”くれるため、公平な時計トークに没頭しようではないか。

カルティエ パンテール ドゥ カルティエのリストショット
カルティエのプレゼンテーションは、間違いなくトレードショーで最も好きなイベントのひとつだ。30分間、身の回りのあらゆるものすべてが赤と金色に彩られ、カルティエのロゴが表示される。プレゼンテーション用のトレイ、ノートや鉛筆、そして小さなエスプレッソコーヒーのカップまで、お揃いのソーサーに繊細に置かれていた。カルティエの世界へと誘われるその数分間は、新鮮さ、フレンチアクセント(発音)、そしてリストショットを上手に撮ることだけが問題なのだ。

私はこのプレゼンテーションに、スモールウォッチの課題を持って挑むつもりはまったくなかった。しかし各コレクションのアイテムを試着してみると、小振りウォッチが大量にあったことに気づいた。

まずは「タンク アメリカン」。ステンレススティールではかわいらしい印象ながら、ダイヤモンドをあしらったホワイトゴールドでは完璧な仕上がりになっていた。私は普段、レクタンギュラーダイヤルを持つ時計を褒めるときは「タンク サントレ」までにとどめているのだが、「タンク アメリカン」については新たな敬意を抱いている。この敬意はほとんど、同僚のリッチ・フォードンのおかげなのだが、彼はそのなかで、ヴィンテージの「タンク アメリカン」を購入すれば、私の「タンク サントレ」への強い憧れが一時的に和らいで、入手・購入する領域に入るだろうと、親切にも教えてくれた。

カルティエ タンク アメリカンの横置きイメージ
カルティエ タンク アメリカンのブレスレット寄り
カルティエ タンク アメリカンのケースサイド
オークションにときどき出品される、ダイヤモンドでできたアール・デコ調のカルティエ ブレスレットを試着するような気分で、今回は新しい可憐なダイヤモンドバージョンを試着した。頑丈でありながらしなやかさもあり、そして宝石がセットされているため非常に強い輝きを放っているが、決して明るすぎることはない。正直なところ、時計をじっくり吟味する前にこのブレスレットに心を奪われてしまった。シルバーのサンレイダイヤル、ブルースティール製のソード型時分針を備えたこのクラシックなカルティエに。ロジウム仕上げのWGケースとリューズには、ブリリアントカット ダイヤモンドをセット。さらにロジウム仕上げのWGブレスレットにもブリリアントカット ダイヤモンドをセットしている。ミニモデルの「タンク アメリカン」は、2023年秋に778万8000円(税込予価)で発売される予定だ。

次は新しい「パンテール ドゥ カルティエ」にいこう(人気のものを好きになってしまうという私の悩みを思い出させてくれる!)。金無垢にブラックラッカーとダイヤモンドをあしらった文字盤を合わせた、スモールサイズの時計だ。試しにつけてみると、パンテールがセクシーで可愛らしい時計だと呼ばれていることについて、今まで考えていたことや感じていたことをすべて覆されたような気がした。このすらっとした優美なアイテムは、手首につけるとベルベットのような感触をもたらした。まるで真夏のクローゼットから完璧なバイアスカットのシルクのドレスを引っ張り出すかのように、簡単で、風通しがよく、完璧で、予備の選択も必要ない、そんな感覚を覚えたのだ。私は彼女をゆるく巻いて、手首の内側をちらっと見て時間を確認するだろう。そして黒いアイテムを、もっとたくさん身につけるようになるかもしれない。私はこの時計を中心に、まったく新しいライフスタイルを築いていくのだろう。YG製の小さな「パンテール」は、30.3mm×22mmのサイズで、長寿命クォーツムーブメントを搭載している。こちらは2023年冬に、403万9200円(税込予価)で発売される予定だ。

カルティエ パンテール ドゥ カルティエの横置きイメージ
グランドフィナーレは、バングルにつけられたミニ「ベニュワール」だ。これは実物を見るまで、私の好みとは程遠いものだった。だがゴールドオンゴールドが私を虜にしてしまうということを知るべきだった。この「ベニュワール」ウォッチで、まったく新しいカテゴリーのジュエリーウォッチを生み出したと思う。「ベニュワール」を金無垢のバングルに装着したデザインチームの天才に、敬意を表したい。バングルはブレスレットよりも主張が強いと感じるが、宝石をセットしたものよりかは主張が薄められていると思う。バングルがジュエリーウォッチのどの位置にいたとしても、私の目には完璧に映る。なお発表会では、この時計がほかのブレスレットとも重ね付けできるように設計されていることまで教えてくれた(私にはまさしくそう聞こえた)。巷で話題になっているスタッキング(重ね付け)について、個人的な感想がどうであれ、大都市の富裕層が住む地域を散策すれば女性は皆スタッキングしている。LOVE ブレスレット、アルハンブラ、テニス ブレスレット、チャームブレスレット、そして高価な腕時計も一緒に。カルティエが消費者の声に耳を傾けた結果、重ね付けしたときに少し楽に休めるような時計をつくりあげたというのは、とても素晴らしいことだ。新しい「ベニュワール」はクォーツムーブメントを搭載し、2023年夏に171万6000円(税込予価)で発売予定となっている。

カルティエ ベニュワールのリストショット
カルティエ ベニュワールの文字盤寄り
小振りな時計を身につけることがトレンドになっているのかもしれないし、その結果、私は誰よりも早くクールなものを知っていると言わんばかりに、ファッションに敏感な編集者のように振る舞っているだけかもしれない。しかしこの新しい流れのなかで、私は純粋に、時計の未来に希望を抱くようになった。ソーシャルメディアや、ここHODINKEEの神聖なホールで、あなたやあなたの気持ちを口汚く攻撃するスタイルエディターに影響を受けているのと同じくらい、自身にとって何がクールかを決めるのはあなただけなのだ。ロイヤル オーク オフショアや、カルティエ「ベニュワール」のバングルをつけて、至福のひとときを過ごせる世界に乾杯しようではないか。

チューダーが誇る最新鋭の新施設の裏側、

チューダーが建てたル・ロックルの新工場を見学。

今回僕は、スイス ル・ロックルに新しくオープンしたばかりのチューダーの工房見学の招待を受けて、2日ほど早くジュネーブに到着していた。最近、その新施設で組み立てられたペラゴス 39が手元に届いたこともあり、この日は秘密めいていながらも進化を続けるチューダーの世界を垣間見ることができる貴重な機会となった。その時計で時間を確認しながら、アッパーデッキからほかの報道陣がホテルを出てバスの座席を確保するのを見守った。

ジュネーブからチューダーの新施設までは、湖畔の都市を出てからスイス時計産業の中心地のひとつであるル・ロックルへ向かうため、クルマで2時間ほどかかる。興味深いのはブランドが97年という長い歴史を持ちながら、これがチューダーにとっては初となる独占生産拠点であるということだ。2018年に着工を開始して2021年に完成したこの工房は、チューダースーパーコピー時計代引きサプライヤーや産業能力、そして肝となる熟練の時計職人とつながるための理想的な地域に、チューダーに特化した専門拠点を提供することを目的に建てられたものである。

総建築面積は11万4000平方フィート(1万591㎡)以上、そのなかで6万平方フィート(5600㎡)以上の作業スペースを備え、700以上のリファレンスがあり、ここでは世界80カ国で販売しているチューダーウォッチの組み立て、テスト、品質管理が行われている。さらに温度と湿度を理想的にコントロールする特殊な空調システム、自動着色のエレクトロクロミックガラス、442枚からなるソーラーパネルによる電力供給など、エンジニアリングの視点から見ても、この建物は完璧に近代的に配慮されたソリューションとなっていた。

新施設は合理的に、ふたつの区画に分けられている。ひとつは組み立てフロア、テストフロア、品質管理(部品チェック、ブレスレットのフィッティング、刻印など)といったチューダーのオペレーションに特化した区画だ。そのもう一方には、チューダームーブメントの製造部門であるケニッシの専用スペースがある。

ケニッシと一緒にムーブメント側の新施設からスタートした。

チューダーのムーブメントを組み立てている時計職人の作業風景。

ここまであまりピンとこなかった方のために説明すると、ケニッシはチューダーが設立しているためその傘下にある。2015年からチューダーが自社製ムーブメントの開発に取り組んだ結果、ムーブメントの製造と組み立てを行う子会社として2016年に発足したのだ。現在ケニッシは、チューダー(当たり前か)、シャネル(ケニッシの事業の一部を所有している)、ブライトリング、タグ・ホイヤー、ノルケインなどのためにムーブメントを共有・開発している。とはいえケニッシはチューダーの元にある。

時計職人が座っているデスクには、手作業で組み立てられるムーブメントを管理する小さなプロダクションが内蔵されている。ムーブメントが職人に届けられると彼らは作業を行い、その後ロボットアームに支えられた中央のストレージから再びデスクを流れるキューへ1カ所に集められていく。

ケニッシは3つのレンジに分類されるムーブメントを製造しており、現在ひとつのムーブメントを構成する部品の約80%を自社で生産している(残りは密なパートナーを通じて供給)。チューダーの新施設ではふたつの同じ組み立てラインがあり、そこは部品や手作業で組み立てたあとの最終動作を、ほぼ自動化されたラインの一連に沿って停止位置へ供給する。注目すべきなのはケニッシが垂直統合型で運営しているのに対し、チューダーのムーブメント以外の生産は水平統合型であり、さまざまな部品はブランドパートナーを経由するか、チューダーがスイス所属の関連会社を通じて生産されているという点だ。

ムーブメントは、各デスクとムーブメントを組み立てる各ステージを結ぶトンネルで構成される専用システムを介して職人の手元に届く。

プラスチック製のホルダーに納められた小さなムーブメントは、コンピュータと専用のプロセスで制御。半透明のトンネルのなかを流れていき、職人の元から出たり入ったりする。ムーブメントが完成すると建物の反対側に向かっていき、もうひとつの区分である組み立てフロアにて、チューダーウォッチ本体に取り付けられていく。

なお組み立ての現場は僕が訪れたほかの時計メーカーと似たような感じだ。巣のように配置された時計製造のワークスペースのグループがあり、そこで熟練の時計職人の手によって、時計を構成するさまざまな部品がひとつにまとめられていく。それぞれの個室に設置しているデスクではあらゆるリファレンスの組み立ておよびチェックが出来て、すべてのプロセスは“無駄な在庫を持たない”理念に基づいて稼働しているため、クライアントや小売業者の実際の需要に基づいて生産している。各個室は1時間に3~5回、新しい空気を循環させて空間の流れをよくしている。ちょっとした工夫をすることで、発生するホコリを極限まで抑えているという。

次の工程では、組み立てが終わった時計(ストラップやブレスレットはセットしていない)がMETAS規格やTPC規定(Tudor Performance Controlの略)に基づいてさまざまなテストを受ける。このエリアは非常に素晴らしいロボットのサポートにより、24時間稼働する完全自律型の工程だ。時計は圧力テスト、精度チェック、極度の磁気に晒されても(特にMETAS認証のためにはマスト)パワーリザーブが正常に機能するかどうかの試験を行っている。テストの途中で見かけた、変わったモデルを見つけられるだろうか?

このステージでは、腕だけのロボットやダーレク(ドクター・フーに登場するロボット)みたいな配達ロボットが登場する。スイスの時計製造という環境を背景にしつつ、現代の製造プロセスの一端を感じられるとは、なんて素敵なことだろう。

ブラックベイ セラミックの模型を専用のロボットがトレイに乗せて回収場所に運ぶ動作。

これはテストフロアにある反磁性装置で、最大1万5000ガウスというMETASクロノメーターをテストすることができる。

METASクロノメーターを反磁性装置機に運ぶ専用のトレイ。

そして最後に、時計職人が時計、機能を徹底的にチェックし、希望の刻印を調整したのちブレスレットやストラップが装着される。おもしろいことに刻印はレーザー式で、実はかなりワイルドなデザインも可能とのことだ。

この裏蓋は“ホッケーのパッドなんてつけていない”(ニセモノではない)。

多くのロボットアームたちが特定のプロセスを実行しているのを見たあと、本物の人間がわずか数秒で新しいブレスレットをセットしている工程を見るのは楽しかった。チューダーのブレスレットを傷をつけずに装着するには特別な技術が必要なため、ぜひ講習会を開催してほしかった(しかも配送のためにブレスレットはビニールに包まれている状態だ)。それほど本当にすごかった。

ブレスレットやストラップをセットしている風景。

僕がいままでどんな記事を書いてきたか知っている人なら、この過去10年間、チューダーに多くの賛辞を送ってきたことをご存じのはずだ。僕は彼らが製造する時計を心から愛しているし、最近ではペラゴス 39を手に入れるほど自身のお金もつぎ込んでいる。だから今回ル・ロックルの新施設を見学し、実際に時計を組み立てている職人たちに会うことができて特別な喜びを感じた。僕の時計もそう思っているはずだ。

帰りのバスに乗ってジュネーブに戻るとき、チューダーの新しい施設は僕にとってのひとつの大きなコンセプトである、“成熟”を証明しているものだったと考えていた。チューダーはロレックスと距離を置くべきだと主張する人はいないと思うが、チューダーが過去15年間にわたって目覚ましい成功を収め、その成功によってブランドに少し余裕ができたことは確かである。この独立は、さまざまな事態を物語っているのだ。

それは生産量の増加を意味するのかもしれない。ひとつ確かなことは、METASクロノメーターのラインナップを増やしていくことを意味しているということだ。しかしそれは同時に、チューダーが価格帯、生産、サプライチェーンを守ることで、特にブランドの時計が実際に世界中に行き渡って多くの人たちの腕に巻かれるようになったとき、それがチューダーの継続的な成功につながることを意味している。

オーデマ ピゲがマーベル・コミックとの最新コラボレーションでサプライズ!

ラグジュアリーなあなたの隣人、スパイダーマンの登場だ。
オーデマ ピゲはフランソワ-アンリ・ベナミアスCEOの素晴らしくマニアックなビジョンのもと、人気キャラクター・ブラックパンサーのミニチュア彫金を文字盤中央に備え、さらにデザイン要素をケースにもあしらった4桁万円のロイヤル オーク コンセプト“ブラックパンサー”フライング トゥールビヨンを発表した。
この時計に関する私の説明は、時計コミュニティから寄せられた反応に比べれば、ごくありふれたものだ。しかし、なかにはこの時計と、まもなく終了するベナミアス氏によるブランドマネジメントという点を見逃しているものもあった。
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”
ロイヤル オーク コンセプト“ブラックパンサー”フライング トゥールビヨンの核心は、カルチャー的なタッチポイントを現代の時計製造とクラフツマンシップに融合させることだった。その結果、最高のディテールを備えた手仕上げによる彫金が実現。実機においてもそれは素晴らしいものだった。
私は幸運にもその時計を長い期間試すことができ、そのアイデアに不快感を覚えるのではなく、むしろその技術に感動して帰ってきた。ケビン・ハート、NBA選手のドレイモンド・グリーンやスペンサー・ディンウィディなど、セレブリティがこの時計に惹かれるのを目の当たりにし、文化的にも衝撃作だった。
ベナミアス氏がポップカルチャーに造詣が深いことを知れば(映画やコミックをこよなく愛する人物だ)、その考え方がより明確になる。そして、数年間ブラックパンサーと一緒に過ごしてきた我々は今、新たな候補者を迎えることとなった。
オーデマ ピゲのロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”は、御三家ブランドによる、マーベル、コミックブック、時計とのクロスオーバーの最新作だ。文字通りの意味での説明になるが、この時計は基本的にそれ自体を物語るものであり、多くの点で前回の発表時に行われたデザインを引き継いでいる。250本の限定生産で、価格は19万5000スイスフラン(約3000万円、日本円価格は要問い合わせ)だ。
つまり、ベースモデルはコンセプト コレクションで、42mmという非常に優れたサイズなのだ(強めの主張かもしれないが、ロイヤル オーク コンセプトはすべてこのサイズにすべきだと思う)。このモデルには、トゥールビヨンと同様に、チャプターリング式の分表示が備えられている。
文字盤には、ブラックPVDコーティングが施されたゴールドのインデックスとアラビア数字が交互に配置され、その上に同素材の針が重なっている。針と数字はホワイトの夜光塗料で仕上げられ、暗闇でブルーに発光する。そして忘れてはならないのが、フレームの中央にある、ウェブ(蜘蛛の糸)を操るスパイダーマンの立体的なミニチュア彫金だ。
しかし、ブラックパンサーでは、ワカンダのヴィブラニウムを多く含む鉱山からインスピレーションを得たデザインを採用していたが、この時計はウェブ的なアプローチをとっているようだ。その意味で、スケルトン文字盤とは呼ばず、部分的にオープンワーク化したように見えるウェブダイヤルと呼ぶことにする。
ブラックパンサーのストラップはフルパープルだったが、スパイダーマンはブラック(なぜブルーでなかったのかは不明)にレッドのアクセントが加えられている。ブラックとグレーに加え、ブラックとレッドのストラップも用意されており、どちらもチタン製バックルが採用されている。
ブラックとレッドのラバーストラップ仕様。
チタンケースには、全体的に鏡面仕上げとブラスト仕上げが交互に組み合わされ、前モデルのような刻印の追加はない。ケース本体はチタン製だが、ベゼルはブラックセラミックである。
そして、ピーター・パーカー自身も登場する。ダイヤルアートでは、スパイダーマンがマンハッタンを旋回しながら、片方の手はフレームからはみ出し(表向きはウェブを持っている)、もう片方の手はまるで3D映画のスクリーンから手を伸ばして、さらにウェブを放つ準備をしているかのように前に突き出ている。
このスパイディのデザインは、映画化されたキャラクターではなく、コミックの1ページから直接引用したものだ。これは、一連のリリースにおけるAPとマーベルのパートナーシップの明確な境界線である。これはマーベルのコミックキャラクターであり、マーベル・シネマティック・ユニバースの延長線上にあるものではないのだ。
この作品がどのようなアーティストにインスパイアされたものなのか、正確には知らないのだが(私の脳にはこれ以上多くのオタク趣味を受け入れるスペースは無さそうだ)、この彫金のダイナミズムは文字どおり凍りついた生気のないイメージに動きを与えるものだと思う。そして、ピーター・パーカーの背中がトゥールビヨンの怒りの矛先をかろうじて逃れているところを見ると、この時計のデザイナーには脱帽だ。
内部に搭載するのはCal.2948をベースにしたまったく新しいムーブメントで、ブラックパンサーのCal.2965から変更されている。オープンワークは、APチームのエンジニアリングの総力を結集し、ムーブメントのパーツは、スパイダーマンを主役にするために必要なものだけに絞り込んでいる。
スパイダーマンは自社製Cal.2974で駆動する。
そうすることで残されたのが真っ黒な空間から現れ、トゥールビヨンを振り回すスパイダーマンの姿なのだ。オーデマ ピゲによるとキャラクターのシルエットとボリュームは、「まずCNCマシンを使ってホワイトゴールドのブロックから切り出されます。そのあとテクスチャの異なる外観が生まれるようにスーパーヒーローのスーツにレーザーエングレービングを施しているのです」
この工程に続いて、補正など彫金関連の仕上げは、ひとりの職人による手作業で行われる。塗装も手作業で仕上げられている。全部で50時間かかる作業だ。
前回のリリースと同じ基本的なケースを利用したことは、ここでも素晴らしい選択だったと思う。もし、前作からひとつのコンセンサスがあるとすれば、それは42mmケースの全体的なフォルムだ。
このような時計には十分な実験があるものだ。生きているパーツがひとつでもあれば絶対に直さない。その代わり、APとチームはスパイダーマンの彫金を輝かせるために、比較的まっさらなキャンバスにしたのである。
私はまだこの作品を実機で見ていないが、もしこれがブラックパンサーのようなものであれば、ここで見るこれらの画像はすべてを表しているとはいえない。
コミックと最高級時計とのコラボレーションは、ある意味ではばかげたものかもしれないが、もしかしたら勇敢なことでもあるかもしれない。数量限定なので、前作と同様にコレクターズアイテムになることは間違いないだろう。
しかし、これだけでは終わらない。ブラックパンサーと同様に、同社はこの時計のユニークピースをオークションに出品し、ファーストブックとアショカ協会に寄付する。ブラックパンサーのユニークピースは520万ドルで落札されたが、本作はそれを上回る620万ドル(約8億6620万円)で落札された。
ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン”スパイダーマン” 42mmチタン製ケース。ブラックセラミック製ベゼルとリューズ、サファイアクリスタルとケースバック。50m防水、文字盤に手描きと手彫りの立体的なスパイダーマンのキャラクター、ブラックPVDコーティングのホワイトゴールド製インデックス、ブラックのインナーベゼル、蓄光コーティングのホワイトゴールド製ロイヤル オーク針、手巻きCal.2974、3Hz、約72時間パワーリザーブ、トゥールビヨン、時、分表示。